無言 常三郎

厳しく伝授しつづけた技、鉋一徹「常三郎」の鍛造

鉋鍛冶屋「常三郎」初代は常三といい、28年間鉋製法を体得した後、昭和22年にこの地で「常三郎かんな製作所」として看板をかかげた。二代目「昭男」三代目「徹」と今では時代の流れとともに古来鉋製法の奥義を後継者に伝授しながら、近代製法もとりいれて二刀使いを極めた。

一月の末日、雪が降りそうな灰色の雲の下。この日は事務所奥にある「鍛錬所」に足を運ぶ。鍛造とは地金の材料のチェーンや鉄橋の解体材を火に入れ、鉋の材料となる平地金に加工すること。この地金になるための古い鉄を仕入れるのが至難の業で、既定の材料がないため高級な鉋を造るのは明治中期以前の鉄でなければならないという。今回は数年ぶりに広島県三原から古いチェーンがあるとの情報が入り、錬鉄として約5トンを入荷した。

コークスが火床に入り、火が焚かれ始めると一気に工場内が暖かくなってきた。火の加減を見ながら次々にコークスを放り込む「1300度が適温だね、これは勘。この作業が勘でできるようになるまで4、5年かかったかな」最適な温度に達した炉の中に切断されたチェーンを身長に入れていく。中まで火が通るように奥へ奥へと。

5分くらい経っただろうかこうこうと真っ赤に燃えたチェーンを金敷に移動。すぐさまカーン、カーン、カーン、という音が響き渡り、火花を散らしてチェーンが変形し始めた。ハンマーのタイミングに合わせて、掴箸の先を回転させる技は長年の経験がなせる技。気魄が宿る。「ずいぶん怪我もしたし、火傷もしたね」だけど「のんびりしてたら、すぐ鉄は冷めてしまうから短時間で伸ばしていかないといけないでしょ」一瞬の出来事に躍動感と緊張感が詰まっていた。「鉄は熱いうちに打て」そんな言葉がピタリとくる現場で地金はできあがっていった。

株式会社 常三郎 〒673-0433 兵庫県三木市福井字八幡谷2151 TEL:0794-82-5257

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