無言 鋸鍛冶 三代目 順太郎 光川大造

手作業一貫、繊細に見極める鋸職人の姿

「伝統工芸士 光川大造」。工場の奥から覗かせたその姿はシンプルで、目じりに入った笑いジワが印象的な方だった。高校を卒業後、鋸鍛冶について27年。10代の頃は別の鋸鍛冶で修行をして鋸製造の技を身につける。「小さな頃から、二代目の姿を見て育ったから迷わずこの道を選んだんです」。まっすぐに静かに話すその口調からは「真」という言葉が感じられた。

光川さんの工場があるこの三木市では、鋸鍛冶が400年以上続いた伝統産業。その間少しづつ進歩をとげ今では機械化した大きな会社も増え一大産業となった。光川さんの工房で一部は機械化されているが、その多くは手作業によるもので伝統の技へのこだわりが品質を確実にしている。

作業は終始清閑し、光川さんは先ほど見た顔とは違う険しい表情で鋸を見つめていた。鋸板となる鋼の焼き入れ作業が始まる。炎の前に座り、鋼全体をまんべんなく赤く熱し、息を止め、油の中へ。鋸を硬くするのはこの時「温度の見極めが大切だね、鋸全体を均一した温度に出来るようになるまでには時間がかかったよ」松炭火を使った鋸鍛冶屋特有の焼き入れ焼き戻しを終えると、そのあとは鋸板を薄く削る「せんすき」、「歪み直し」「目立て」の工程へと続いていく。

北の光が静かに差し込む部屋で真直ぐに伸びた鋸板を見つめる。息を潜む。その目は確実に板のゆがみをとらえ先の細い金槌でトントンと叩いていく、リズミカルにそして軽やかに。鋸を造るうえで一番難しいとされる「歪み取り」。コツコツと時間をかけてならすことで、鋸を滑らかな面にしていく。「歪みの取り方ひとつで、切れ味が変わってくるんだ。だから自分の目で確かめて丁寧に仕上げていきたい」

大正時代に初代光川順太郎さんから始まり、二代目の忠雄さん、三代目の大造さんにわたる鋸鍛冶工房。今では数少なくなってしまった手作業の鋸鍛冶職人の光川さん「これからも伝統的製法を守り、積み上げられた技術を次世代に伝えていきたい」そう話しながら、自らの手で作りだす鋸を見つめていた。

株式会社 鋸鍛冶 三代目 順太郎 光川大造 〒673-0433 兵庫県三木市福井字八幡谷2151 TEL:0794-82-5257

有限会社 カネジュン

兵庫県三木市別所町高木592-2 三木金属工業センター内
TEL:0794-82-6583

アーカイブ